こんにちは。「米ドル資産運用のコンシェルジュ」米国公認会計士 (CPA) &ファイナンシャルプランナーのトクとく子です。
今日はアメリカの不動産取引で登場する「エスクロー」についてお話しします。
一般的にアメリカの不動産取引は透明性が高いといわれています。日本の不動産取引は、売主と買主、それぞれに仲介業者がついて(同じ仲介業者が売主と買主の両方につく場合もありますが)、決済は買主から売主の銀行口座に直接振り込まれます。一方で、アメリカの場合は、資金のやり取りはすべてエスクローという第三者機関を通じて行います。
エスクローとは?
エスクロー(Escrow)は日本語でもそのままエスクローとして使用されていることが一般的ですが、あえて日本語にすると「第三者預託機関(または制度)」あたりかと思います。日本の不動産取引に例えると、イメージとしては司法書士が所有権の移転と決済代金の預かりから経費の支払い、送金までしてくれる感じです。ヤフオクやメルカリで、買主に商品が届いたのを確認してから売主に代金が支払われるのと同じように、不動産の所有権が無事に買主に移ったらエスクローが売主に必要経費を引いたうえで残金を送金します。不動産売買には売主側・買主側共に様々な付随費用が発生するので、それらをいちいち直接支払うことなく、エスクローから各付随費用が業者やお役所に支払われ、決済書類(Closing StatementまたはSettlement Statementと言います)上で買主の負担、売主の負担の経費がそれぞれ相殺されて最終的に残金を売主が受け取る、という仕組みです。
州ごとに異なる制度
アメリカのほとんどの州で不動産取引はエスクローを通じて行われるのが一般的ですが、エスクローを通じた取引が法律で義務付けられている州と、エスクローの使用を義務付ける法律がない州があります。
エスクローを使用する必要がある州は以下の通りです。
- California
- Arizona
- Alaska
- Hawaii
- Idaho
- Nevada
- New Mexico
- Oregon
- Texas
- Utah
- Washington
エスクローを使用しない場合は、弁護士またはTitle Company(タイトル(権原)会社)がエスクローの役割をします。
タイトル会社 vs. エスクロー
タイトル会社とエスクローは、どちらも不動産取引に関与していますが、それぞれの機能は異なります。
タイトル会社は、不動産の所有権の履歴を調査・確認し、売主が不動産を販売する法的権利を有しているか、不動産に対する先取特権や請求権がないかを確認する役割を担っています。また、権利の不備から買主と金融機関などのローンの貸し手を保護するために、Title insurance(タイトル保険)を発行します。タイトル会社は通常、取引の財務面(資金の預かり&経費の支払い&送金)を扱うことはありません。
一方、エスクローは、取引の財務的な側面を扱います。エスクローは、中立的な第三者として、取引に関連する資金や書類を保管し、各方面に経費の支払いをし、不動産の所有権を移転する前に、すべての当事者が契約上の義務を果たしていることを確認する役割を担っています。
エスクローとタイトル会社はそれぞれ別の機能ですが、Title Companyがエスクローを兼任することもあります。
このように、アメリカの不動産取引はエスクローという制度があるおかげで透明性が高いため、海外からの取引でも安心して行えます。
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